──アットホームな空間、という表現は使い古されたレトリックだが、そこは、回りくどい言い回しではなく ”ホーム” だった
地元愛と多幸感に満ち溢れていた。

 アットホームな空間、という表現は使い古されたレトリックだが、そこは、回りくどい言い回しではなく ”ホーム” だった。1月16日に練馬のライブハウス・BE Bornで開かれたJowのワンマン。キャパシティ40人の箱には80人以上が来場し、地元に初凱旋したシンガーや仲間達のパフォーマンスに酔いしれた。乗車率200%越えの熱気と野次に溢れる"ソウルトレイン" はこの夜、地元愛と多幸感に満ち溢れていた。

KORGの鍵盤を操るJowの甘くスモーキーな歌声がやおら響き出す。

 午後7時過ぎ、ぎゅうぎゅう詰めの地下空間に、KORGの鍵盤を操るJowの甘くスモーキーな歌声がやおら響き出す。

 「いつまでも」、「花咲」とオリジナル曲に始まり、「今日はカバーをたくさんやろうと思う」との宣言通り、続いてDREAMS COME TRUEの「悲しいキス」。さらに、DA PUMPが昔から大好きという語りから、先日ISSAに遭遇し本人に熱い思いを伝えたことと、「英語で何か言われてよくわからなかったけどバイブスは伝わった」というJowらしい緩い回想を挟んで、同グループの「You Can Understand」。

 元から自分の歌だったかのようにメローに仕立てたかと思えば、ラップパートも完全に自分のものにしてみせる度量を見せた。この男、ラップもイケる。

会場は人が多すぎて腕を回すことも困難な状態に。

 スティービー・ワンダーの「Lately」、「Ribbon In The Sky」から、同じく練馬が地元の ”ネオネエンターテイナー” HIDEKiSMを呼び込むと、彼(彼女?)が「ワンチャン、ムーディーな雰囲気をぶち壊す」と宣言。

 Me & My「Dub-I-Dub」でヘリコプター(タオルを掲げてグルグル振り回すアクション)を観客に要求すると、会場は人が多すぎて腕を回すことも困難な状態に。歌手活動10周年を迎えた性の壁を超越したディーバは、美空ひばりの「歌は我が命」を力強く歌い上げ鮮烈な印象を焼き付けた。

 再びJowが中川晃教「I WILL GET YOUR KISS」を披露し休憩へ。会場では終始、 ”輩” 感強めの愛のある野次が飛び、また野次に対して野次が飛び交うという ”練馬マナー” が貫かれることになる。

その小柄な身体からは意外と思えるほどの低く力強い声でフロアを虜にした。

 後半戦はブルーノ・マーズ「When I Was Your Man」で幕を開けた後、Jowの盟友とも呼べるダンサーのNaoが軽くステップを踏み登場。

 この日はマイクを持ち宏実「complete」、オリジナル曲「ONE」をシャウトし、その小柄な身体からは意外と思えるほどの低く力強い声でフロアを虜にした。

”ベベベベベベベンジー・イナハウス” 

 再度、Jowがソロで三浦大知「Knock Knock Knock」を聞かせた後、ラッパー・Benzyが ”ベベベベベベベンジー・イナハウス” (©この日のJowの声ネタ)。Jowのバックバンドも務めるモリマサも飛び入りドラムを叩くと、Benzyのフリースタイル・ラップもキック、スネア、ハイハットの間で踊りだす。

 Jowにとって、Naoは開進一中の同級生、Benzyは一学年下の後輩にあたる。NaoがJowから出演を打診された時に言われた言葉をMCで明かしたように、このステージは「練馬で本気でやってる奴」らによる一夜だ。

"グランドマザーの前でマザファッカー"ときめた。

 そのBenzy。先輩からの無茶振り気味なビートにも難なく合わせ、ファストもスローも乗りこなす。渋谷のクラブでステージに立つ男は、普段とは様相が異なる、前方が座り席である会場ということも苦にせず堂々とアクト。

 この日は祖母が初めて孫の勇姿を見に来ていたが、開演前の発言通り、"グランドマザーの前でマザファッカー"ときめた。

トゥエル一発で、会場を文字通り ”ロック” した。

 「バンバン人を呼び込もうと思っていた」とのJowの思惑に沿い、この日、間違いなく練馬で一番天国に近いキマり方をしていた竜翼(練馬の"輩"感の体現者)がキレのある踊りを披露。

 しかし、彼に「俺を完全にフリに使ったじゃないですか」と言わしめる男・小野が、ある意味でこの夜のハイライト級の熱狂を生み出す。呼ばれてもいないのにステージに向けてゆっくり歩き出し、Jow曰く「ダンサーでもなんでもねえ」にも関わらず、トゥエル一発で、会場を文字通り ”ロック” した。

 シラフの状態でステージに勝手に立ち、しっかり場をエンターテインする姿は、国内屈指のステージ慣れした不動産営業マンと言って過言はない。多分。

ホームパーティーと呼ぶには贅沢過ぎる舞台に幕を下ろした。

 波乱の後、JowとBenzyがいつも自らのそばにある音楽への愛を綴ったオリジナル曲「そばに」、そしてJowがAIの「Love is…」を披露。アンコールのオリジナル曲「朝は来るはず」で約2時間のホームパーティーと呼ぶには贅沢過ぎる舞台に幕を下ろした。

男前が眉間に力を入れ目を閉じ、口を大きく開け旋律の上で ”哭く” 。

 Jowはライブ後、「しゃべりを勉強しろ」との声を多数もらったようだが、あっけらかんとしたMCも彼の味のように思える。なぜなら、大切にしている思いや愛は全て歌声の中に凝縮されているのだから。

 シンガーの歌声にソウルを感じるとはどういうことなのか。男前が眉間に力を入れ目を閉じ、口を大きく開け旋律の上で ”哭く” 。これがソウルでなくて何だというのだろうか。

「地元だからこそ学芸会的なレベルにはしたくない」

 観客がほぼ地元の仲間たちという中で、演者も楽しんでいることがひしひしと伝わってきたが、「地元だからこそ学芸会的なレベルにはしたくない」とのJowの意思は充分に達成された第1回目。

 質と空気感が程よいバランスで両立し昇華したステージは、どんなドキュメンタリーやタウン誌も描けていない練馬の “いま” を音楽で抽出したアマチュアナイトとなった。

 第2回は5月14日、BE Bornにて開催。なおライブ後、打ち上げ会場の一つ「たぬき」が開進一中の同窓会となりカオスと化していたことは、明記しておく。